みえない力に導かれ、ぼくらはこの鉄道に乗った、下りた、また乗った。
耳を澄まし、声を響かす。
小説家、詩人、音楽家、翻訳家がかけめぐる、2年間の旅のレール。
古川日出男 管啓次郎 小島ケイタニ―ラブ 柴田元幸 / 青柳いづみ
監督:河合宏樹
2014 日本/100分/カラー/デジタル/16.9
古川日出男 管啓次郎
小島ケイタニ―ラブ 柴田元幸
/ 青柳いづみ
監督:河合宏樹
2014 日本/100分/カラー/デジタル/16.9
2014年7月19日より 夜空をめぐるレイトショー
関連情報
震災後、宮澤賢治の声を手がかりとして、小説家・古川日出男と仲間たちが見つめ続けた世界。
彼らの旅を、カメラが追った2年間。
2011年12月24日、朗読劇「銀河鉄道の夜」が誕生した。
古川が賢治のヴィジョンを震災後の視点から戯曲化した「銀河鉄道の夜」。詩人・管啓次郎、音楽家・小島ケイタニ―ラブ、翻訳家・柴田元幸と共に作り上げた声の舞台は、東北をはじめ全国各地をめぐり、土地ごとの変容をとげました。失われた人々への鎮魂と、未来への希望。みえない力に導かれた4人のケミストリー、どこまでも続く線路の旅に伴走するロード・ドキュメンタリーです。
監督は、2年間に渡り彼らの旅を追った河合宏樹。独自の視点で切り取ったドキュメント映像、出演者のインタビュー、そして、そこに朗読劇の観客の一人である女優・青柳いづみが、彼らの訪れた東北の土地を再訪する“新たな視点”として加わります。レールに導かれるように乗車し、その土地で賢治を朗読する彼女を通して、銀河鉄道が土地から受け取ったメッセージをみつめます。
今春、<東京国際文芸フェスティバル2014>での先行プレミア上映で満場の大喝采をうけた本作が、新たなレールを走り出します。
地域 | 劇場名 | 公開日 |
---|---|---|
東京 | 渋谷 ユーロスペース | 2014年7月19日(土)〜8月1日(金)終了 |
静岡 | ヴァンジ彫刻庭園美術館 | 2014年8月16日(土)終了 |
愛知 | 名古屋テレビ塔3F特設会場 | 2014年10月19日(日)終了 |
山口 | 山口情報芸術センター(YCAM) | 2014年12月7日(日)終了 2014年12月14日(日)終了 |
東京 | SARAVAH東京 | 2014年12月24日(水)終了 |
京都 | 立誠シネマ | 2014年12月20日(土)〜12月28日(日)終了 2015年1月10日(土)〜1月16日(金)終了 |
大阪 | 第七藝術劇場 | 2015年1月24日(土)~1月30日(金)終了 |
岩手 | 盛岡・おでってホール | 2015年5月31日(日)終了 |
岩手 | 大船渡 市営住宅川原アパート | 2015年7月24日(金)終了 |
岩手 | 住田町役場 町民ホール | 2015年7月25日(土)終了 |
place | theater | date |
---|---|---|
Kentucky | Lexington, The Kentucky Theater | 11 March 2015 at 19:00 |
Maine | Bates College, Filene Room | 17 March 2015 at 19:00 |
Los Angeles | The Japan Foundation | 16 May 2015 at 14:00 |
コメント
「ほんとうのうた」が家に届いてから、なかなか見られないでいた。
最初の17分あたりで止まって、また何度も繰り返し再生した。
喜多方で私は知人に進められて彼らの銀河鉄道の夜の朗読会を見に行った。
何も知らなく訪ねたそこは、なんだかまるでとてもなつかしく、でもそこで行われた行為に
とても不思議な印象をうけた。
小説家と詩人は歌って叫んでいて、音楽家は車掌をしているし、翻訳家は美しい安定感で時を定着させた。
ずっと続く旅はずっと旅を問いながら、旅を続け、ずっと続く、見た事ない景色だった。
「ほんとうのうた」を見終わった私の夜にも銀河鉄道が迎えにきた。
なかなか見れなかったのは、震災から3年、未だ旅する準備が出来てなかったからだったのかな。
「ほんとうのうた」は彼らからの銀河鉄道の 乗車切符なのだ。 東北の雪景色が見える。
もちろん乗車、しようと思う。
美しい映画、ありがとうございます。
PIKA☆/愛
寄り添うのでもなく、見届けるのでもなく、ただひたすらに、そこに居合わせるカメラ。
しかしそのために、どれだけの熱と想いが必要なことか。
河合宏樹のはじめての長編作品は、ほんとうのうたを追った、ほんとうの映画になった。
佐々木敦(批評家/HEADZ)
身体のどこかに鎮まらせたい魂を抱えて、あの日から進んできたように思います。
この映画を観ながら、僕の魂のそういった部分がスーっと楽になりました。
沈黙のような静寂ではないですけれど、長雨の夜のような、そんな静けさです。
とても感動しました。
後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
僕たちは「流れ去るもの」に向きあってきた。僕という一人の小説家にできるのは、ひたすら瞬間瞬間に切実に反応することだけだった。なのに河合宏樹という監督が、それを連続するものとして記録した。その驚き。
こんなことを言葉に(文字に、声に)していいのか判断がつかないのだが、僕は、あの波濤によって何もかも「流れ去ったもの」になったわけではないのだなと感じた。この『ほんとうのうた』を観て感じた。あれらは過去ではない。そして、過去にしてしまえる物事でもないと。そのことを強く思う。
古川日出男
旅はいつだって知らないあいだに始まっていた。
きみの旅も、ぼくの旅も、渡り鳥や魚たちの旅とおなじように、あるとき。
ところが何かの出来事をきっかけに、いくつかの旅が同期し、偶然の道連れとなることがある。
その旅にはそこにいない人々さえ合流し、声にもならない声で呼びかわしつつ、遠いどこかにむかってみんなで進むのだ。もう二度と会うことのない親しい人々の影、まだ生まれてもいない未来の子らがもたらす明るい光。巨大な破壊のあとの日々を生きながら、深く傷ついた社会の明日を手探りで考えながら、ぼくらはこの鉄道に乗った、下りた、また乗った。どこかへ行き着くのか?それはわからない。
でもその線路の終わりは見えず、まるで夜の銀河へとほんとうに続いているような気がするのだ。
管啓次郎
河合さん
すっかり暑くなりました。花巻の雪のこと、覚えてますか。
僕は今でも眩しく思い出す音があるのです。古川さんと北上川へ向かったあの道中の、歩きながら踏んだ雪の音たちです。
シャリンシャリンと薄いガラスを割るように、そして歩みを進めるにつれて、ザクッザクッっと深くなっていく雪の音。
足元が不安定になってきて、ビクビクしながら歩いていると、ズザザザザッ!!!と後ろの方で大きな音が聞こえてきました。 急いで振り返ると、河合監督が雪にはまって、白銀の世界へ埋まっていくところでした。カメラだけは濡れないように手を空に掲げながら。
靴も服も完全にダメにして、帰りの車内で大量のホッカイロで体を温めていた監督の姿を思い出します。
「ほんとうのうた」という映画の中で、僕は登場人物の一人として素晴らしい仲間に導かれて無我夢中で走り続けた!と言えたら、かっこいいのかもしれませんが、実を言うと「無我夢中」というのが一体どういうことか、それさえも手探りの迷いの日々でした。
自分の書いた歌なのに、歌うのが怖いのはどういうことだろう。なぜこんなに音を出すことが怖いんだろう。この深い雪はどこまで続くんだろう。
そんな迷いの日々をまっすぐに追ってくれた河合監督の映像を見ながら、僕は何度も胸が熱くなりました。
監督も、きっと僕と同じように見えない暗闇に向かってカメラを回し続けていたんだ、ということを知って。
映画の完成、とても嬉しいです。おめでとうございます。
でも、まだまだ走り続けましょう。遅ればせながら僕もやっと無我夢中が少しずつわかってきた気がします。早く君に追いつきます。
小島ケイタニ―ラブ
なかば偶然に朗読劇の仲間に入れてもらった僕ですが、その劇を主たる素材とした、河合監督の思いを映像と音で綴ったこの映画に「出演」する、などという事態にまで発展するとわかっていたら、もしかしたら、尻込みしてしまったかもしれない。わかっていなくて、よかった。先が見えないというのは、時として実にありがたいことだと思います。
柴田元幸
いい大人四人が汗水たらして、見えない何かに向かって本気でぶつかっていく──
震災以降、耳を塞ぎがちだった気持ちが変わった。もっとおおきな声に耳を澄まそう、と。
それは、子守唄に近いと思う。赤ん坊をあやそうと自然と口から出る、あのうた。
この映画は、ただのドキュメントではなく、僕なりの朗読劇「銀河鉄道の夜」への答えです。
河合宏樹
▲トップに戻る