写真館(第2回)

2021年3月11日の「コロナ時代の銀河」公演公開に向け、過去の公演の一部を朝岡英輔が撮影した写真と共に紹介する「銀河鉄道 写真館」を開館(オープン)します。

2013年12月8日(安積歴史博物館)

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選者:古川日出男コメント

これは私の母校での公演だった。福島県立安積高等学校という。いろんな人たちの力がこの無料公演を実現させてくれた。当日、手伝ってくれたスタッフ数も半端なかったし、来てくださった地元の方の数も半端なかった。写真はリハーサル時の、設営を終えた直後の会場。私が考えたのは、ステージ(演じられる場所)を観客たちに囲んでもらうことと、その囲まれる両側が「川の両岸」となって、私たちが「川のなか」で演じること。管さんも小島くんも柴田さんもこの川を、流れ、奔り、歌い、読んだ。ストーブも共演した。教壇も黒板も共演した。じつはこの会場(安積歴史博物館)は古い木造校舎で、いまは使われていないのだが、その「古い」という歴史を全部ステージに投入しようとした。私が考えたのは「時間との競演」だったとも言える。私が、終演直後に、「ここは川なんです。このステージの組み方は」と説明したら、会場のみんなが「あっ」と声を洩らして、その瞬間に、本当に川が生まれた。あの感動を私は忘れていない。

※なお、会場は2021年2月13日に発生した震度6弱の地震で、(10年前に続いて)ふたたびダメージを受けた。復旧を心から祈る。

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この日は郡山駅から会場へ着くまでひとりで、そこからずっと写真を撮っていた。会場の安積歴史博物館はもともと学校で、古い建物に積み重なった時間がこぼれ落ちて、そこで駆け回っていた子どもたちの声が聴こえるような気がした。大きな窓から差し込む12月の光が柔らかく演者たちや我々スタッフ、お客さんまで全てを包みこんで、建物の前で記念写真を撮っているお客さんたち、用意された大量のスリッパ、石油ストーブ、沸いたお湯からあがる湯気までが何処か懐かしかった。公演が始まり4人がひとりひとり歩きあるいは駆け込んできた時、それぞれが少年に見えた気がした。それくらい表情と動きに生き生きとした力を感じたのだ。それは朗読が進むにつれ会場全体に伝播していき、その場にいる全員が一緒になって徐々に日が暮れていく空間の中で何か大切なものを共有していた気がする。
余談だが、後に小島くんが書く「ビッグ・アイ」という曲があって(2015年クリスマス公開の「聖夜の小さな贈りもの」で聴く事ができる。)、大きなアイはeyeであり愛だと思うのだけど、実は郡山駅前にビッグ・アイという建物があるらしい。この時私はビッグ・アイを知らず見ていない。再訪する際はじっくり見たいと思いつつ、まだ達成されていない。

2013年12月24日(SARAVAH東京) 5-01_20131224039_DSC1511

選者:柴田元幸コメント

この年のSARAVAH公演は、なんといっても「小島君が熱を出さなかった公演」として記憶される(前年の記憶があまりに強烈なので)。個人的には「かなりの時間、自分がリンゴの木になっていた公演」「自分が音の出ないギターを弾いた公演」「みんなでリンゴを齧った公演」(美味だった)として思い起こされる。

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公演前に車掌さんたちが登場したり、柴田さんがリンゴの木になっていたり、和やかな公演だった気がする。演者たちが舞台の淵から飛び降り全暗になり終演、という終わり方が好きだった。黒を基調としたシックな服装でりんごを齧っている4人を見て、はつらつとした大人はかっこいいな、と思う。
今後の公開予定

第3回 2月24日公開

第4回 3月3日公開

第5回 3月10日公開

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